2012年01月22日

森下さんの涙

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1月18日、毎年恒例!仙台フィル元コンマス、現大阪交響楽団コンマスの、森下幸路さんのリサイタルにいってきました。


森下さんは、ワタシが弦楽器、いやオーケストラ、そして何よりも仙台フィルファンになるきっかけを作ってくれた方。
アノ時仙台フィルとであってなければ、今のワタシはとても考えられないですからね、いわば、人生の恩人、というべき存在でしょうか(笑)


森下さんは仙台フィルにいるころから、「10年シリーズ」と銘打ちリサイタルを続けていますが、残念ながら仙台からは巣立ってしまても、ずっとこうやって、仙台でも毎年リサイタルをひらいてくれています。
10年もすぎ、もう今回は15回(笑)おもえば、最初はまだ幼い娘たち連れて行って、感想文書かせたりしてましたが(笑)懐かしい思い出。


今回のタイトルは「英国の薫り」、イギリスシリーズでしたが。
第1回からずっと聴いてるワタシにも、今回は特別心に残るコンサートでした……。


なんといっても、森下さんのおおきな魅力の一つは、選曲のセンスの良さ!!
今回もイギリスということで、パーセル、ヘンデルの定番曲に、ヴォーンウィリアムス、ブリテン、エルガーの、オシャレでイギリス風のかわいい小曲。
そして圧巻は、ウォルトンの超絶技巧の難曲ソナタまで、息をつかせぬプログラムでした!!


もちろん、小曲でも大曲でも、森下さんの「歌うヴァイオリン」はもちろん健在!
いや、歌うというより、呼吸する、ささやく……
息づかいが聞こえてくる、まるで人の声のような、ヴァイオリン。




実は、演奏だけでなく、森下さんの「軽妙トーク」も楽しみな、このリサイタルなんですが、
この日、なぜか、最後まで全くトークはなく、アンコールになってしまいました。
エルガーといえばおなじみの「愛のあいさつ」だったんですが、これがまた、今までワタシの知ってる「愛のあいさつ」じゃない!!(笑)
オシャレ感満載、でも熱く震えるような「愛のあいさつ」。
ワタシもう一度結婚式するとしたら、森下にぜひこの「愛のあいさつ」弾いてもらいたい(爆)



「ありがとうございます」。
カーテンコールで呼び戻されて、森下さんがこの日初めて口を開きました。


「大震災のあと、実は今日はじめて仙台にきたんです。」と。
「僕はこれだけ長い間仙台でお世話になっているのに、ほんとうにいったい何ができるのか、わからなくて………」
森下さんの声が、つまって「スイマセン……」。


今日は、ただ黙って演奏しようと思ってきました。
口をひらくと泣いてしまいそうで………。


そして絞るようにいった、ひとこと。
「僕は、ヴァイオリン弾くことしか、できないんですよ。」



最後にもう一曲、と始まったのは、「ダニーボーイ」。
会場のあちこちからすすり泣きが。
ワタシの目からも、あついものがながれて、止まりませんでした。



なにもなくなった、浜辺。たくさんのひとたちの笑顔や、会話や、愛や、喜び、なによりも大切ないのち、そして、思い出。
たくさんのものが、全部流されて、なくなって。


ワタシたちはただからっぽに、そこに立ち尽くすしかないのだけれど。
でも、そのからっぽの心から流れる涙、そのいっぱいの涙を流さなければ、前には進めない気がするのです。



終演後、楽屋にお邪魔して、森下さんと握手を。
ついいってしまいました。

森下さん、今日のこの演奏で十二分ですよ。
5億10億の寄付のお金をもらうより、ワタシにとって、ずっとうれしかったですよ。
ほんとうにありがとう。
明日からまた頑張れます!


森下さんの目にも、奥様のピアノの陽子さんの目にも、いっぱいの涙。
お互いに、声にならずに、手を握るだけだけど、ちゃんと心は伝わります。
ありがとう。




ワタシたちはこの震災で、たくさんのものを無くしたけれど、
もっとたくさんの、目にはみえないけれど、一番大切なものも、心に得ることができました。


いま、そろそろ、増税論議なんかがでれば、
世の中では、
「いつまで被災地のためにガマンさせられるんだ!
俺たちの生活まで巻き込まれてるなんて許せない!
そろそろ自力で復興しろよ!
被災地被災地と特別扱いして甘やかすな」
なんて、声が聞こえてきます。
悲しくなるけど、怒る気力がありません。



一方で
森下さんご夫妻のように、表にはでなくても、
ずっと影でワタシたちを、ほんとうに思ってくれているひとたちが、たくさんいます。



そのひとたちのために、頑張りたい。


必ず、頑張りますから。
posted by SPC at 12:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぐらにゅー